河内宙夢 詩、日記

コウチヒロム 日記、詩、活動

12/6

お昼。バイトの休憩中。コンビニの前ではしゃぐ子供と、財布片手の若い母親。

子供は母親の手を取って弾むように歩く。母親も笑っていた。

イートイン脱税しながらしばらく愛の見学をした。

こんな瞬間が自分にもあったんだなあと思いながら、サンドイッチを食べる。

 

バイトの帰り道、よく行く古本屋の前を通りかかると閉店セールのチラシが貼ってあった。

自転車を止めて、店じまいの片づけをしていたお兄さんに思わず、店閉まるんすか。と声をかける。

そうなんですよ。長い間ありがとうございました。とお兄さんは言った。

一年足らずしか行ってないけど思い入れのある店だった。

好きなお店が閉まるっていうのは、結構キツイ。悲しみとか怒りとか色んな感情が出てくるけど、まずお疲れさまでしたというべきなんだろう。

こんな街もう出ていこうかなとちょっと考えながら自転車を漕ぐ。

明日は人と、約束がある。

 

 

 

記憶の残骸

「人間は何かを思い出すためにキスをしたり、歌を作ったりしたりするんじゃないですか」

この人になら、、と一瞬思い、余った時間は彼女の肩にずっともたれかかっていた。

好きとか、嫌いとか、そんなんじゃなくて。京橋のピンクサロンにて。

 

最近は性欲旺盛な自分。東京に帰ったり大阪に頻繁に行ったりしたからかもしれない。

自分の場合こういう時は不思議と曲は出来ない。楽しいけど、心からテンションは上がっていないのかもしれない。

無性に本が読みたくなって石原吉郎の『望郷と海』を読み返す。

「言葉がむなしいとはどういうことか。言葉がむなしいのではない。言葉の主体がすでにむなしいのである。言葉の主体がむなしいとき、言葉の方が耐え切れずに、主体を離脱する。」(沈黙と失語)

戦後ロシアの強制収容所で失語状態になった石原吉郎は、ある日目の前で射殺されたロシア人の捕虜の死体をみて言葉が湧き上がってきたらしい。

言葉が現実を超えるのではなく、現実が言葉を超えた時に、本当に言葉が出てくるのかもしれない。

望郷と海は結構ヘビーなので一日一章ずつくらいしか読めないが、いままで何回も読み直してる本。

 

 

 

 

11/19、20

11/19

新しいバイトの研修。隣の席の65歳のおっさんと仲良くなる。

昔は豆腐屋に大豆を卸す仕事してたという。

丁寧な言葉遣いの人だった。

孫の写真、何度も見せてくれる。

奥さんの事好きですか?

もう二人ではあんまり話さなけど、好きだよ。

良いっすね

研修を終え別れる。

人生の事20秒くらい考えて辞める。いつもより多く歩いて帰る。

茶店でやらなきゃいけない事をノートにまとめる。

バンド練習、ゴミ袋購入、シャンプー購入、来年やる企画の事、しなきゃいけない連絡。

あとはふと今日良いなって思った歩行者天国、と言う言葉だけノートに書いて家に帰る。

11/20

吉増剛造の即興パフォーマンスを見に行く。

空間現代というバンドの演奏をバックに真ん中に立っているガラスに抽象画みたいな線を殴り書きしながらポエトリーリーディングしていた。

緊張感が凄くて見たあとドッと疲れる。

でも見れてよかった。

外はびっくりするくらい寒い。

帰りは一緒に行った友達とチャンポン食べて喫茶店であれこれ話して帰宅。

さびしんぼう

一年くらい前に、友人に勧められて家で大林宣彦監督の「さびしんぼう」を観た。

その頃は自分にまとわりつく寂しさにうんざりしていた。

なんとなくまとっていた寂しさが脱いでも脱いでも剥がれなくなって、自分がさみしさそのものになってしまいそうで。とても怖かった。寂しいことを恐れていた。

だけどこの映画を見てとても安心した。

次の日には勝手に主題歌を作った。

寂しさに気づいて、寂しさに諦めて、そして抗い続けて生きたいと思えた。

好きな人を想った。

さびしんぼう

さびしんぼう 恋をしていると

どうして誰にも 会いたくなくて

さびしんぼう あなたに会えなくて

地球で一人の さみしんぼう

さびしんぼう 楽しいだけが

恋じゃないって 知ってるつもり

さびしんぼう 昔は海だったっていう

この街で さびしんぼう

月が近いから上ろうよ あの道の先の歩道橋

近づいてみたら分かったよ

こんなに近いのに届かない

オーマイリトルガール

さびしんぼう 恋をしていると

どうして誰かに 話を聞いて欲しくて

さびしんぼう 誰でもよくて

ひどい私も 嫌いじゃなくて

君のそのシャツは素敵だね

派手なその柄が可愛いね

もう少しそばに来ておくれ

二人は真夜中の公園で

オーマイスウィートダーリン

夜と手を取り 私は一人

明日は笑える

好きな人が居る

好きな人が居る

好きな人が居る

 

恋は愛の日傘

昼間に外に出て、やりきれない気持ちを歩いてごまかそうとしていた。この時期はちょっと寒くなってからまた、夏が最後の力を振り絞るように、暑くなる。空は高く、日差しがやけに強かった。

くさくさして、喫茶店でも行こうかと歩いていたら日傘を差した女とすれ違った。

ちょうどその時浮気について考えていた。

「恋は愛の日傘」

愛の日差しは強いから 休みましょう 避けましょう

日傘の様な恋をして

揺れる思いは陽炎で 電話は辞めて手紙を書いた

分からない 分からない 本当は何も分からない

私は髪を切りました

異常気象は世界的 逃げましょう 避けましょう

日傘の様な恋をして

甘い匂いが立ち込めて そのあと雨が降りました

分からない 分からない 本当は何も分からない

私は髪を切りました

7/24

あまりにも早く毎日が過ぎていく。

友人の友人の墓参りに行った。

投票にも行った。ちょっと政治の話をしすぎた。

夏は映画が見たくなる。のでたくさん見た。

大林信彦『さびしんぼう』、ギヨームブラック『女っ気なし』、黒沢清『旅の終わり、世界の始まり』など、面白かった。

俺の物語なんていらないけど、他人の物語を求めてしまう。

〇〇ちゃん、自宅に遊びに来る。俺は心と格闘する。俺の心、人の形になったり犬の形になったりした。〇〇ちゃんは俺の格闘する様を見に来ているのかもしれない。

CD発売に向けて忙しくなってきた。どうなるだろう。沢山の人に聴いてほしい。

もらった父親のジャケットが椅子にかかっている。微妙にサイズが大きい。俺の知らない匂いがして、俺の知らない歌を歌っている。

これを着てアルバムのジャケット写真を撮った。就活、ではなかったけど。

おかげですごくいい写真が撮れた。

今度はこれを着てライブをしよう。

朝ちゃん

朝ちゃんという名の女の子だった

僕達は男三人鴨川でなんとなく凧揚げをしていた

良く晴れた夏の休日だった

うだつの上がらない男たちの凧は一向にうまく上がらない

あの頃は軽やかに舞い上がっていたのに!

悩み、不安、猜疑心、自尊心、孤独、偏見

年を取りすぎた僕達の凧は鉛のように重かった

「お兄ちゃん下手くそだね。ちょっと私に貸してみて!」

朝ちゃんはやってきてそう言った

お父さんぺこりと遅れてやってきた

朝ちゃんは何度も補助輪付きの自転車を爆走させて凧糸を引っ張った

凧はざざざっと無情にも引きづられていっただけだった

結局お父さんが一番うまく凧を揚げた

やっぱり凧をうまく揚げられるくらいじゃないとお父さんは務まらないんだなと思った

風を集めて空高く舞い上がった凧はまるで鳥の様だった

ごねる朝ちゃんを抑えてお父さんはぺこりと頭を下げて帰って行った

気が付けば日曜日の太陽が川に落っこちていた

それが凄く美しくて、なんだかたまらない気持ちになった