貴重な録音日。身体が重くて何もできず。
何も繋がってないエレキギターでガシャガシャ新曲を作る。
身体は重くても、歌は飛ぶ。
大きなミスが続いて落ち込む、身体だけは元気でいたいと栄養ドリンク。
ピューという風が、気持ちいい。
車で流すのはリチャードヘル&ザ・ヴォイドイズ。
ロバートクワインのギターは、絵の具みたい。
秋になると聴きたくなる。
ボブディランを見に行った。
ずっと聴いてきたけれど、生で見たことはなかった。
チケット高くて前日まで悩んだけど、やっぱり見に行くことにした。
席は遠くて、姿はあんまり見えなかった。
黒ずくめのバンドに囲まれてグランドピアノを弾きながら淡々と歌うディランは遠くに見える亡霊のようだった。
マイクに乗ったピアノの音は安いカシオトーンのプリセットみたいな音だった。
私は眠らないようにガムを食べた。
失礼かなと思ったけど、このままじゃ眠ってしまう。
昔はよく眠る時にディランを聴いていたのを思い出した。
ライブが終わった後、友人と生ぬるい夜の有明を歩いた。
なんだったんだ。
ライブ帰りの人はみんなディランのことを語っていた。
友人とは特にディランの話をせずになんとなくお互いの近況について一杯飲みながら話して、別れた。
翌朝仕事に行って、次の日起きたら風邪をひいた。
参ったな。と思い職場に連絡をして仕事を休んだ。
改元飲んで眠りながら、少しずつディランのライブを思い出す。まだよく分かってないけど、この日を忘れることはないだろう。
詩を書いて友達に送った。
結婚して1年が経つ。
お互いに今は少し離れて暮らしている。
あらゆる時に彼女が隣にいる時を想像する。その大きなお尻が、小さな口が、キレイな声が聴こえる。そしてもっと深く、ひとりになる。
初めて会ったのは京都のライブハウス。俺は振られたことについて初めて会った彼女に相談なんかしてた。
それから偶然頻繁に会うようになった。
その後警備のバイト中にデートに誘った。一度、俺が遅刻した時に、本を読みながら待ってる姿が何故だかとても綺麗で、それを見た瞬間に、この人と結婚したいと思った。遅刻に関しては結構怒られたけど。
子供が好きで、木瓜の花が好きで、aikoが好きで、ハイヒールが好きで、テレビや映画ですぐに泣く。会うたびに色々なことが俺も好きになった。
彼女といると今まで上手くできてたことができなくなる。なんとなく上手く大人になっていたはずなのに、子供に戻る。上手だったさみしいふりも、下手くそになった。本当は寂しくなんかなかったのかもしれない。
彼女との最もロマンチックだった瞬間は出会ってしばらくして友人たちと行った台湾旅行だ。
屋台を歩いてる途中に二人ではぐれて、たどり着いた先は基隆川というところ。夜は深くて少し寒かった。
コンクリートの川べりは虹色のライトで照らされて、地面には世界中の言葉で「愛してる」と書かれていた。そこを二人で歩いたり、川べりに居る異国の鳥をじっと見たりしていた。
けどロマンチックかどうかはどうでもいい。どんな出会いでも良かったと今は思う。
この人生が偽物だとしても構わない。Mがいるなら。
なぜか最近、一昨年死んだ実家の猫を思い出す。
キキというありふれた名前の猫は、当時公園で雷雨の中弱っていた子猫を小学生の俺が拾ってきたというこれまたありふれたエピソードをもつ猫だ。
確か村上春樹が猫にはアタリの猫とハズレの猫があるみたいなことエッセイで言ってたけど、うちの猫は多分ハズレの猫だった。
毛がサラサラで、高貴で、気まぐれで、品があってみたいな猫とは真逆だった。
毛はすぐ抜けるし歯が抜けてヨダレが垂れていて、ワガママで、座ったり寝てたりするとすぐに上に乗ってきて顔や手をベロベロ舐めまわしていた。誰にでも。
死にましたと親からショートメッセージが来た時はもちろんショックだった。死に目に逢えなかったのが残念だった。
話を聞くとキキがもう死にそうで横になっている時母親がつきっきりで横にいて、つい母親がテレビを夢中で見てるときにニャーと一声鳴いて息を引き取ったという。
親から来た画像は何故かgif画像みたいにちょっと動く死に顔だった。
大往生だったと思う。親も話しながら笑っていた。
もしかして死んだのが今頃だったかなと思ってメールを調べたら死んだのは3/30だった。全然違う。
また会いたいけど、もう会えないんだなと思う。
またもし猫を飼うことがあったらハズレの猫が良い。
バンドレコーディング本番当日。朝早く起床、カロリーメイトを栄養ドリンクで流し込んで電車で大阪へ。
6時間で3曲録音。ツインリバーブを使わせてもらう。音が良すぎて焦る。これじゃ色々バレてしまう。まあ既にバレてるから良いか。
時間との戦いだったけど、バンドの魔法は起きた気がする。多分。
土曜日の心斎橋。休暇時間一人でスタジオを出てちょっと歩けば街に若者がいっぱい居て、少し怯むが、そのまま縫うように歩く。
街のノイズの中で、段々研ぎ澄まされていく何かと鈍磨していく何かを感じてスタジオ戻る。
このスタジオは音にコクが出る。とMTが言ってたのが、スタジオでラフミックスを聴きながらなんとなく分かった気がする。
楽しかった。